2007/6/11応募
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カーテン
ものぐさな友人は、自分の部屋のカーテンを開けない。仕事が忙しく、家には寝に帰るだけの生活なのでカーテンを開ける暇がないからだ、と彼は嘯く。
「だけどそれだけじゃないんだ」
吸っていた煙草を灰皿で揉み消し、言った。
俺は、どんなに部屋が汚れても大して気にしない質なのは、お前も知ってるだろ。それに独り身だからさらに部屋が汚い。一度、ゴミからキノコが生えてるのを見たときは思わず笑っちまったよ。
そんな俺だが、何をトチ狂ったか、大掃除をしてみようと思ったことがあったんだ。部屋が汚いからというより、そういうものに興味があったんだな。だからその時、何年ぶりかにカーテンを開けたんだ。
するとな、声がしたんだよ。若い女性の声だ。
「勝手に開けないでよ」ってね。
そして目の前でカーテンがサーっと閉まっていった。俺は掃除を止めてしまった。
別にな、幽霊とかそういうのが怖いという訳じゃない。しかし「彼女」がそこまで言うんだ、カーテンを開けるのは野暮だと思わないか。だから俺はそれ以来、カーテンを開けてないんだ。お前はどう思う。
そう言って友人は笑った。
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