2007/6/11応募
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頭痛の種
友人の話である。
彼女が食器を洗っているとき、突然鋭い痛みがこめかみに走った。何も考えられなくなる様な異様な痛み。そのせいで食器を三枚も割っちゃったのよ、と彼女は話した。
それから彼女は度々、その痛みに襲われるようになった。食事の最中、買い物の帰り道、浴槽に浸かっているとき。
夫に相談しても、
「甘いものでも食べ過ぎたんじゃないのか」と笑って取り合ってくれなかった。
最初の痛みに襲われてから一週間後、彼女はある夢を見た。それは黒髪でおかっぱの、朱色の和服を着た少女の夢である。その少女がどこからか小走りでやってきて、小さくしゃがみ込む。そして指で何かをつまみ上げると、袂にそれを仕舞い、またトコトコどこかへ行ってしまう。それが三日ほど続いた。
霊感というものを信じる訳ではないが、こう続くのには理由があるのだろう、彼女はそう考えた。そして自分の周りに、夢の中の少女が持って行った、種のようなものがないか探したのだと言う。するとそば殻の枕の中に、見慣れぬ黒い種のようなものがあった。それを枕から抜き取ると頭痛が起こることはなくなったという。
「で、その種はどうしたの?」私は聞いた。
「うちにあるわよ。だけど夫に馬鹿にされたのが悔しくて、夫の枕に入れてやったの。朝になると、夫が目を真っ赤に腫らしながら、『頭が痛くて眠れなかった』って言ってきたわ」彼女はふふんと笑った。
「大事な奥さんを無下に扱ったんだから、これくらい、当然よね」
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